ユナイテッドコラボレーション第2回公演

「こんな、ゆめを、みた。」

んせうふ紙
こんらぶ
秋のルロチ

第2回目公演は、大正時代の近代劇作家、岸田國士の3つの短編「チロルの秋」「紙風船」「ぶらんこ」を、夢の世界を媒介として、物語をナラティブに繋げる恐れ知らずの試みです。
 「紙風船」「ぶらんこ」描かれた舞台は同時代の東京の夫婦、「チロルの秋」はその名の通り、イタリアのアルプス国境近くのチロル地方が舞台となっています。エコール・ド・パリ華やかな時代に学んだ岸田独特の作品です。今回は、氏の言葉にならって、音楽を聴くように、言葉を聴く。空間の心地よさ、大人も楽しめる「対話」にこだわった演出を目指しました。

  過去と現在が交わったり、空間を飛び越えたり・・・。
それでもストーリーは一つに繋がっている・・・。
  コミュニケーションの欠如が危機的な状況を生み出している現代社会。大正時代に書かれた岸田國士の作品「チロルの秋」「紙風船」「ぶらんこ」は、そこに生きる私達に安らぎと癒しを与えてくれます。
 美しい言葉が織り成す男と女の心地よい会話。そこに、私達が必要とする“対話”のヒントが隠されています。夢と現実が交錯するとき、私達はこんなゆめをみるのです(本文より)。



第1回公演に続き、歴史的ともいえる過去の作品を現代にアレンジすること。プロセミアムの舞台ではなく、俯瞰する舞台設定や、映像をどう取り入れていくかなどの試みをおこなっています。この公演で初めて「コロス」を登場させ、ダンス、音楽、演劇をコラボレートすべく、動きのカウントをベースにした演出を試み、好評を得ました。御覧頂きました方々にはこの場を借りてご挨拶とさせて下さい。
ありがとうございました。









Photo:Yoshisato Komaki



原作:岸田 國士
潤色:The United Collaboration

7月7日(土)
15:00/19:00
7月8日(日)
14:00/18:00
ターミナルプラザことにPATOS
札幌市西区琴似1条4丁目
地下鉄琴似駅 B2F


CAST

甲斐 大輔
高橋 千尋
斎藤 もと
二唐 俊幸
石井 南帆
土岐 周平(ルート1)

 

STAFF

演  出・・TUC
ビジュアル・音楽・冨田哲司
舞台監督・・二唐 俊幸
美  術・・高橋 一之
衣  裳・・斎藤 もと
照明・音響・PATOS
制  作
(有)キャパビリティーズ


岸田國士について

フランスに渡った岸田は、ジャック・コポーが主催するヴィユー・コロンビエ座に師事し、フランス純粋演劇運動に学ぶ。ジャック・コポーは20世紀演劇史の中で最も影響を与えた人物の一人である。
  20世紀初頭の欧州で演劇を学んだということは、まさに近代演劇の誕生期に居合わせたということであり、岸田がそこで得たものは当時世界で最も新しく革命的な演劇であった。その岸田が日本に帰り2作目に書いた作品が『チロルの秋』であり、その後数年のうちに立て続けに発表したのが『ぶらんこ』『紙風船』である。
欧州の演劇を目の当たりにした岸田が万を持して書いた戯曲『チロルの秋』、それは岸田の人生にとって初めてとなる舞台にもなった。が、その初日を観た岸田は大変なショックを受けた。
  そのときの様子を岸田はこう語っている。

   初日の幕が明きました。
   私は、実際、汗をかきました。とても見物席に坐つてはをられないのです。喫煙室へはひつて、頭を  かゝへ、おれはどうしてこんなものを演らせたんだらうと、地団太を踏みました。舞台からは、まだ台詞 が途切れ途切れに聞えて来ます。はやく幕が下りればいゝのに……。さうだ、見物席から、そんな芝居は やめちまへ! と呶鳴つてやらう。が、そんなことをしたら、なほ恥さらしぢやないか。私は人から顔を 見られるのさへたまらない気がして、こそ/\楽屋へひつ込みました。処が、そこでまた俳優に顔を合は せ、一体、何と挨拶をすべきでせう。伊沢君が、舞台をすませて、私の方へ歩いて来ます。石川君が化粧 を落しながら、何か私に話しかけました、お前は、こんなところにゐる人間ぢやない――誰かゞさう云つ てゐるやうな気がして、私は、後を振り返らずに外へ出ました。(「チロルの秋」以来より)

  西洋の演劇を輸入し、真似することから、初めから日本語で書かれ、日本のそれがテーマとなる演劇がようやく生まれ始めた時代に、岸田の書いた作品を表現できる演出家や役者などいるはずもなく、岸田はそれ以後、自分の理想はおいておき、日本の演劇レベルに合わせた戯曲を書くようになる。
  また、岸田は、これからの演劇には今までとは違う俳優が必要であり、そのための訓練をする場、新しい演劇を研究し実践していく場が必要と考え文学座をつくった。そしてその文学座は今も尚、老舗劇団として日本の演劇界に君臨している。


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